2008/11/21

「夏の光」 田村優之


友人に紹介してもらった「夏の光」という小説を読みました。
本を手にした時、まず油絵で描かれたような海辺の絵が懐かしい気分にさせてくれました。10代、20代の頃、よく訪れた鎌倉の海を思い出しました。
本を開き、一ページめに描かれている情景が映画のワンシーンのように頭に浮かびました。キャンバスに描かれた油絵の具の匂いが漂ってくるかのようでした。ふと、高校時代に在籍していた美術部のあの部屋の匂いや部室からみた風景もよみがえってくるようでした。
債券のアナリストとして活躍する宮本修一。高校時代の親友でありライバルだった有賀。恋人の純子。そしてあの夏の事件。封印していた過去がよみがえり、怒涛の真実。 後半の展開は涙が止まりませんでした。
完成度が高く、それでいて文章がさらっと心地よい。
登場人物の「心」が、深々と降って積もるように感じられました。感情移入しすぎですね。

ただ、経済知識に乏しい私には専門用語が並ぶと少し辛い部分もありましたが、いい年だし、一般常識として学ぶ部分も多いように思いました。
経済通の作者ならではの一面も、この小説の面白みなのでしょう。

小説のしめくくりもすばらしい。 号泣させておいて、こんな安堵感を与えてくれるとは、なんてすごい作者なんでしょう。 感動しました。どうもありがとうございました。

そして・・読み終えて再び本のカバーに目をやると、それはきっと修一達の夏の思い出の「画」なのだろうと思うのであります。

リエちゃん、紹介してくれてほんとにありがとう。

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